かてなちお ― 「まもる」をテーマに生活情報から防犯情報まで紹介します。

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皆様、ご機嫌如何ですか?閂屋の北野邦彦です。暗く、進展のない話題が支配的な、昨今の日本ですが、明るい話題があります。米映画界最大の祭典、第81回アカデミー賞の授賞式が22日、新人納棺師の物語を描いた、滝田洋二郎監督の「おくりびと」が外国語映画賞を受賞。加藤久仁生監督の「つみきのいえ」も短編アニメ賞に輝きました。

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日本映画のアカデミー賞受賞は、2002年度(第七十五回)に宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が長編アニメ賞を受賞して以来です。これは、素直に快挙といえるでしょうね☆因みに栄えある大賞はダニー・ボイル監督「スラムドッグ$ミリオネア」でした。

大方の予想ではイスラエルの「戦場でワルツを」が本命で「ヤフー」のユーザーによる予想でも70%以上が同作に投票。「おくりびと」はノミネートの五作品中三番人気だったにも関わらず、受賞できました。どうしてでしょうか?

「戦場でワルツを」の前衛的な手法が保守的なアカデミー会員には敬遠されたようで、おくりびとは「穏やかなユーモアを織り交ぜ、厳粛な美を描いた映画が番狂わせの勝利をつかんだ」と説明されています。

また、日本の葬送文化を世界に伝える機会になったようで、遺族の前で遺体を清める所作を「魔術師のような巧妙な手さばきで繰り広げられる儀式は、死者へのお悔やみと崇敬の気持ちを紡ぎ出す」と紹介されています。

アニメ部門を受賞した「つみきのいえ」は、他の候補作と傾向が違い、心に静かに届く表現。「孤独な老人の内面を巧みな設定で映像化し、国民性や年齢を超えて普遍的なテーマを訴え、不安の多い時代に、肉親との絆を再確認する内容が今の時代に合ったのだろう」と解説されています。これは「CG」を多様した派手な作品が闊歩する中、素朴な手書きアニメの原点の魅力が、新鮮に映ったからだろうと、思えます。

今回のかてなちおは”守る”という事と、直接関係しませんが、今回のアカデミーを受けて、今後、どういった映画が主流と、なってくるのか?また、かてなちお的にというより、北野個人が推薦、注目の映画を紹介したいと思います。折角の快挙なので、ご祝儀的な気分で眺めて頂ければ、幸いです☆

昨年度の「リーマンショック」以降、世界は景気後退局面に移行し、暗く、殺伐とした空気が支配的です。今回の受賞でも「戦場でワルツを」が受賞出来なかった理由として、題材が酷く映ったのもあるでしょう。アニメ部門含めて、どちらかといえば”ほのぼの”した作品が選ばれたな~という印象です。

こうした”動向”は多分、邦画の方が早いようで最近の公開作品のほとんどが、日常のちょっとした感動や、奇蹟といった現実感のあるファンタジーが主流ではないでしょうか?「草食系男子」といった内向的で、非攻撃的な男性が主流となりつつある世界では、こういった作品がもてはやされるのだと、思えますし、日本だけに留まらないのでしょうね。

景気が悪い事は、社会としては良くない状態なのですが、いい面もあります。それは「知恵を絞る」からです。限られた予算の中での作成では「アイデア勝負」となり、想像力を駆使する事になります。演出にも費用を使えないのですから役者の「演技力」といったコストの掛からない、純然たる表現力が求められる結果、素朴ながらも、いい作品に仕上がるのではないでしょうか。

現在の企業が頭を絞って、1円でも安く、いい品を揃えようとする企業努力に似ています。また、個人でも出費を抑える努力や、不況から脱出するために、スキルアップ等、自己努力を図るのと同じですね。そうして冬の時代を過ごし、次にやってくる春の時期に更に、飛躍するのと同じです。う~ん、守る話になってるな~(笑)

世の中は”振り子”のように、左右に揺れ動くので、反動として、タッぷり資金を使った”大作”も登場するでしょう。最近でも「007/慰みの報酬」といった伝統的な大作が公開されているのが、その証明でしょうし、シリーズ物といった、”外れ”のない作品が度々、登場する事になるのではないでしょうか?大作では。

1968年は画期的な試みが映画ではなされていて「猿の惑星/2001年宇宙の旅/リビング・オブ・デット」が公開された年です。当時は1月5日に「プラハの春」同30日「南ベトナム共産ゲリラ蜂起」5月16日「十勝沖地震」6月5日「ロバート・ケネデイ暗殺」12月24日「アポロ8号、月の地平線から昇る地球の写真が撮影」等々、歴史が大きく動いた年でもありました。

そういった”世相”が三作品には反映されている様です。映画的には、一流の役者を使い、莫大な制作費で仕上げた大作。映像技術の革新と、人類の発展を描いた大作。制作費はわずかながら、画期的なアイデアと役者の演技力があれば、大作を造る事が出来ると証明した作品。それぞれ、色は全く違いますが、いずれも歴史に残る作品であり、当時を反映してSF作品でありながら、どこか暗い、世紀末的雰囲気が特徴です。

この68年に起こった現象が、近年中に起こるような気がします。と、いうのは何処となくあの時代と現代が似た雰囲気がある様に感じるからです。しかし、あの時代のように、全く新しい手法で映画が誕生するとは、思えません。何故なら既に、”出尽くしている”からです。ゆえに、従来あった手法を新しく見せる、見えるように知恵を絞った上手い作品が登場すると、思えます。

いつの世も、同じようなもので、ようするに「コロンブスの卵」の発想なんです。従来あったモノに、別角度から光を当て、新しく観えるという事なんですね。とはいえ、その「発想」は斬新なんですが。これが「アイデイア」と呼ばれるモノなのでしょう。「聖書」にも「日の下に新しいモノはなし」と、紀元前から書かれています(笑)

最近の邦画では「デトロイト・メタル・シテイ」がお勧めです。ああいったジャンル、日本人にはかなり馴染みが薄く昨今の日本のヒットチャートから完全に逸脱した”デス・メタル”を描いたという点が快挙と思っています(笑)

それに「ギャグ漫画」でアイデイアを出し続けるのは、本当に難しい事なんです。それでいて、ストリーもキャラクター設定、成長と、きちんと描けていると思います。個人的には「ジーン・シモンズ」が登場しているだけでも、十分満足なんですがね(笑)

主演の「松山ケンイチ」には注目しています。割合”いろ”のある役柄が多く、実は演技する上で、一番、簡単な役でもあるのですが「男達の大和」では、ごく普通の若者もきっちり演じていたので、彼の力は本物と判断してもいいでしょう。いずれは、海外へも打って出て欲しいです。

おくりびとの「本木雅弘」も本当にいい役者になりましたね~個人的には「小澤仁」がお勧めだったりしますが(笑)おそらく「役者」の”輸出”も進むだろうと思えます。英語の発音を完璧に覚えなければなりませんが・・・

今秋、公開予定「カムイ外伝」が注目中の注目です!本編である「カムイ伝」の映像化は各方面からの”ものいい”等で難しいので外伝となるのでしょうが、それでも、監督に「崔洋一」脚本に「宮藤官九朗」と気合は十分伝わってきます。主演は松山ケンイチ君です。昨今、ありがちな”あまい”作品にはならないだろうと、思います。

あの、殺伐とした救いの無い世界を、クドカンがどう、仕上げるのか?楽しみですね~本当は本編を「大河ドラマ」あたりで見たいのですが、これこそ、天地逆となっても無理でしょう(笑)しかし、カムイの様な作品を正面から映像化出来る社会が来たら、それは、着実に日本社会が進化した時だろうと思えます。

カッコーの巣の上で」が民放で放映された事は、ありませんし、今後もないでしょう。それと同じ理由で、実に子供社会だな~と思っています。差別でも区別でもなく、現にあるモノをどう判断するか?だけだと思うのですが。覆い隠す方が、より差別でしょうに。

個人的には辛く、厳しい作品ですが、カムイのような活きる事、生き抜く事を真正面から扱った、骨太の作品みたいですね。NHKでやった「火の鳥」も本作の、羽毛程度の出来でしたから、難しいですね(苦笑)

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